Flying Boar

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小型木製からくり、題材は十二支-亥です。

ハンドルを回すと、上部の人形が上下左右に動き、羽根と脚が動きます。


素材:楢、オーク、欅、栃、楓、山桜、銀杏、栗、山毛欅、エンジュ、セン、ウォルナット、等(品による)、 /真鍮、


Concept & Prologue


干支で暦を表す方法は古く、古代中国を起源としてアジア圏以外にも伝わっておりロシアや東欧の国などでも見られます。

そして現在までの長い歴史の中で、地域独自の考え方と結びつき変化してきました。


その一つに、十二支に割り当てられた生き物の違いがあります。

ほとんどの国で「亥」は、「豚」を意味します。


なぜ日本では「猪」なのかについては様々な理由があるようですが、古くから「不殺生」の考え方が存在したことが挙げられるようです。

山を聖域と崇め、そこで暮らす動物をむやみに殺せば神が怒ると考えられていたこともあります。 そのため、殺すために飼うような家畜や食肉の文化が根付いておらず、猪を家畜化した「豚」自体が存在しなかった事が挙げられるようです。

長文になってしまうので、詳しくは記述しませんが、「日本の食文化(食肉文化)の歴史」を辿っていくと、根幹に流れる日本人らしい考え方に触れる事も出来、興味深いです。

この「不殺生」や「住み分け」の様な考え方は、もしかしたら現代にも連綿と続き、鎖国を生み出し、「非武装(戦争のための軍隊を持たない、銃禁止)」を実現できた背景、穏やかな国民性を生み出す理由になるのでは?と考えたりしました。刀狩りや、生類憐みの令など、関連つけようとすればいろいろ浮かんできます。 が、ここには主観が混じりますのでご参考まで。


ともあれ、十二支「亥=猪」のイメージは日本で独自とも言っていいかもしれません。

では、この「猪」どのように考えられているのでしょうか。


神話では山の神の使いであり、時に神自身が猪の姿を借りて表れ、力強い物語が目立ちます。

仏教では摩利支天が猪に乗った姿で表されます。この仏は陽炎を神格したものであり、あらゆる障害を物ともせずに、何人たりとも傷つける事が出来ないとされます。

この事は、戦国時代の武将に好まれ、楠木正成、前田利家、毛利元就、徳川家康、他、多くの信仰を集めました。


他には、猪突猛進の言葉にもみられるような、力や速さ、実直さ、などのイメージや、他の十二支と同じように人間よりも多産な生き物なので子宝祈願、安産祈願、子孫繁栄の縁起が担がれます。


一方、他の国で十二支「亥=豚」はどのようなイメージなのでしょうか。


豚は昔から存在する家畜なので、多くの国で食文化を支える重要な動物であり、財を象徴する様です。

中国では、蓄財・開運・金運上昇のシンボルとされ、ドイツでは豚の置物が幸運のアイテムと考えられ、「幸運だ!」という意味で「Schwein gehabt!(ブタを貰った!)」と言います。

貯金箱のイメージでブタの形が思い出される方もいるかもしれませんが、これらの考え方がベースのようです。


英語では「無理だ、不可能だ。」の意味で、「When pigs fly!(ブタが飛ぶなんて!)」と言います。

イギリス初の公式飛行を行った人物はこの言葉を逆手に取り、飛行機に豚を乗せて飛びました。この事から世界で初めて空を飛んだ動物は豚と言われています。
「飛ぶ豚(フライングピッグ)」は、「チャレンジする、不可能を可能にする、何でも出来る」などの意味合いで使われることがあります。

近代日本の流行り文句で「豚もおだてりゃ木に登る」がありますが、豚が高い所に上るというニュアンスを含むのは不思議です。


他にも、宮崎駿さんの映画「紅の豚」では、主人公のポルコ=ロッソは豚の飛行艇乗りとして描かれています。

この主人公ポルコのキャラクターデザインを見て、ふと思いましたが、少しイノシシ風に見えませんか。彼が口元に携えたヒゲは鋭くカールしています。猪の牙のように見えます。

ブタの持つ「温厚そうな」イメージを「ワイルドに/力強く」するためには非常に有効なデザインです。もしかしたら、イノシシのイメージを取り入れているのかもしれません。

「鋭くカールしていなかったら?」or「ヒゲが無かったら?」を考えた時、「紳士な」or「間抜けな」デザインになるので、例えば「旅客機乗り」というキャラクターであれば採用しやすいでしょう。 「戦闘機乗り」には向きません。


話は脱線しましたが、

なんにせよ、「空を飛ぶ豚」は日本でも意外と身近に存在していました。


その他、様々調べていく中で「古今、亥を猪と表現する事は非常に日本人らしい。」、そう考えるようになりました。


そして、要素を組み合わせる事で誕生しました。


「空飛ぶ猪」です。


亥が素晴らしい年になりますように。





下記ページにて販売中です。 ※限定品、在庫限りです。

作者

糸日谷 晃

東京造形大学デザイン科にて美術・デザインを学ぶ。
博物館に就職。 学芸員業務、工作室の運営に尽力。
ワークショップやイベントの企画、題材のデザイン・開発を手がけ、講師を務める。
現在、岡山県最高峰-後山の麓に工房を構えて活動中。


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